院長ブログ
Diary of Gifu Skincare Clinic
2016.05.11
ボツリヌス菌(食中毒の原因菌)が作り出す天然のたんぱく質(ボツリヌストキシン)を有効成分とする薬を皮膚内に注射する治療法です。ボツリヌストキシンには、汗腺から発汗させる神経の働きを抑える作用があります。そのためボツリヌストキシンを注射すると、発汗量が低下し、生活の質を改善します。ボツリヌス菌そのものを注射するわけではないので、ボツリヌス菌に感染する危険性はありません。
患者さんによっては脇を見せていただいているうちに汗が吹き出している方も多くお見受けします。
多汗症の部位にボツリヌストキシンを注射します。
初めに、注射範囲をマーキングします。アイスパックで冷却し、約1~2cm間隔で範囲内の皮膚内に注射をしていきます。必要に応じて麻酔クリームによる表面麻酔を施してから注射します。以下、脇汗に対する治療で実際の写真をお見せします。
汗の吹き出している方はその範囲を中心にマークします。
患者さんによってはイソジン消毒薬と片栗粉を使って、汗の水分をヨウ素でんぷん反応で染めて範囲を特定することもあります。
当院では注射の間隔はやや狭く細かく注射しています。写真はマーキングしたところです。
また、アイシングのみで注射の痛みが耐え難い方は、エムラクリームという表面麻酔クリームを使用し、30分程度浸潤させてから施術します。
マーキング沿って、注射します。両脇で10~15分程度時間を頂きます。
1)施術部位の腫れと軽い鈍痛は数日で治まります。
2)皮下出血が生じた場合は1~3週間で徐々に消えていきます。
3)2~3日目で薬が効き始め、1週間程度で効果が安定します。
4)4~8ヶ月で薬の効果が弱くなり、再び発汗が気になるようになります。
5)定期的に注射を繰り返すことで、生活の質を保ちます。
・施術部位の腫れ、鈍痛、皮下出血が生じることがあります。これらは時間の経過とともに消失します。
・効果の現れ方には個人差・左右差がでる可能性があります。これらは量の不足、広がり方のムラで生じます。必要に応じて追加注入することがありますが、次の注入まで数か月待つことが望ましいとされています。
・稀ですが薬剤に対して耐性が生じることがあります。この場合、全く効果が現れない可能性があります。
・以下の方は施術不能なことがあります。神経筋疾患、呼吸器疾患、薬剤アレルギー、服薬中、妊娠中、授乳中の方。
・施術後、2~3日は入浴、サウナ、激しい運動、アルコールは控えてください。ボツリヌス製剤は熱とアルコールで失活するためです。効果発現まで控えてください。
・シャワーは当日から可能です。
・施術部位のマッサージなどは、術後1ヶ月は避けてください。
・女性は治療後2回の月経が終わるまで、男性は3ヶ月間は避妊をしてください。
カテゴリ:多汗症