院長ブログ
Diary of Gifu Skincare Clinic
2020.01.08
あけましておめでとうございます。平素より当院をご利用いただきまして、皆様には深く感謝申し上げます。
当院は今年で開院5周年を迎えます。5年間で少しずつ地域の皆様と交わる機会を多くいただき、当院の診療理念である、形成外科領域の地域への普及に対し順風に活動させていただいております。誠にありがたい限りでございます。一方、医院運営に関しまして、昨今の人材不足、資材をはじめとする物価の上昇等により、患者様の受け入れ拡充に向けて、なかなか進めがたい現状もございます。しかし、少数のスタッフだからこそできる、心からの患者様対応を、維持さらには向上できるように日々努力することは、どんな背景があろうとも、取り組み続けるべきことであると、肝に銘じております。医療技術やインフォームドコンセントなどは、質を維持し、至らない点を学び続けます。新しいものや皆様がご興味をお持ちの事柄をどんどん取り入れていきたいと思います。
本年も変わらぬご愛顧のほど、何卒、よろしくお願い申し上げます。
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2019.05.17
第62回日本形成外科学会が札幌で行われ、参加してまいりました。今回の特徴の一つ、北海道の歴史について、多くの特別講演を拝聴することができました。印象に残った、北海道大学名誉教授藤田正一先生の講演について、簡単に備忘録と、私の感想を記しておきます。
いつも千歳空港で目にするこの看板ですが、これを土産に買うことはなかったんです。なんか、よく意味が分からず、定番ぽいな~と思ってまして。
しかし、ここには、私にとって教訓となる精神が詰まっており、また、日本の近現代の教育に大きく影響した歴史を垣間見ることができるのです。
明治の初めに北海道の開拓がはじまりました。黒田清隆開拓次官の殖産により、「学問なくして開拓なし」の考え方から札幌農学校が創られ、有名なクラーク博士をアメリカから招聘しその教頭としたのです。
私はクラーク博士の名前は知っていますし、銅像も見に行ったことがあるのですが、この、札幌農学校とクラーク博士が、現代の日本の教育にいかに大きな影響を残したのか、そして黒田清隆の功績をよく知りませんでした。学問なくして開拓なしという言葉は、今こうして年齢を重ね社会経験を積んでいくと、私なりに実感するところですし、精神的な支えにもなる、とても良いフレーズと感じました。
赴任したクラークは、校則を無くし、「Be Gentleman」と教えます。直訳すると紳士たれ、ですが、規則で人間は造れないということです。自身で考え、行動を制し、道理や原理に従うことが大切であると思いました。クラークの人格主義教育をよく表している言葉です。民主主義社会の多くの事柄にも通じる精神と思います。
また、8か月の札幌滞在を経て、帰国の際には「Be Ambitious」と言い残すのですが、私は「大志を抱け」という漠然としたものしか知りませんでした。ここには「青年よ大志をもて。それは金銭や我欲のためにではなく,また人呼んで名声 という空しいもののためであってはならない。人間として当然そなえていなければならぬあらゆることを成しとげるために大志をもて」(https://www.lib.hokudai.ac.jp/collections/clark/boys-be-ambitious/ 北海道大学附属図書館HPから引用)ということで、地位や名声のために生きるのではないという、精神的な価値観を表しているのです。
札幌農学校から、日本中に重要な人物にその精神を教育し、送り出し、明治の発展がなされます。札幌農学校はのちの東北大学、北海道大学となりますが、当時、他の国家主義の帝国大学と並んで、札幌は現代の民主主義の源流となっていく、近代史上重要なものとなり、その背景には黒田清隆やクラークの存在があったということです。
今回は他に、
大垣市民病院の森島先生が、女性医師のキャリアについて講演されていました。このセッションで女性医師が、仕事と家庭の両立ができるか、その中でキャリアをどのように積んでいくのかディスカッションされています。演者の先生は、苦悩しながらそして、目標を常に定めながら、男性医師と同等かそれ以上のキャリアを積まれています!素晴らしい!
学会の後は・・・
左から、まぶたのお医者さん金沢雄一郎先生、ヴェリテクリニック福田慶三先生、常滑のいのう皮フ科形成外科の伊能和彦先生と遅くまでご一緒させていただく機会がありました。大先生ばかりで、私はお邪魔だったかもしれないです・・・。手術のことやクリニック運営のことなど、たまってた疑問をお聞きすることができ、明日からの臨床に生かしたいと思います。ありがとうございました。
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2019.04.06
先日、笠松にある松波総合病院にて、健やかネットワークのセミナーがありました。この日のテーマは「眼瞼下垂」と「形成外科のできること」でした。眼瞼下垂は形成外科疾患の中でも大変ポピュラーな疾患で、ある程度治療方法も確立されています。しかし、更なる手術方法の改良や、基礎医学(神経生理学)的な研究も進化しつつある、興味深い分野です。
松波総合病院形成外科部長の北澤先生のご講演を拝聴し、面白かったことを備忘録として記したいと思います。
自覚症状として、まぶたの開けづらさや重い感じ、上方視野の悪化、まぶしい感じ、二重の乱れや目の上のくぼみ、眉毛の挙上、おでこのしわの悪化、そして、頭痛や肩コリ等々・・・これらは教科書的に言われる症状です。そこにもう一つ、あごを挙げてしまうということを示されました。専門用語でいうと項部をやや後屈し、下顎が挙上された状態で、眼瞼が挙がっていないから、眼球を下方視ぎみにして見てしまうということでしょう。眼瞼下垂の肩こりについては、眉毛を挙げてしまうため、前頭筋から帽状腱膜さらに僧帽筋まで緊張してしまうからと理解しておりましたが、項部後屈した姿勢はさらに僧帽筋の循環を悪くし肩が凝ってしまうのだろうということでした。このことは、臨床写真からもよくわかることで、術後の顔写真は鼻の穴が目立たないのに対し、術前は眼瞼下垂状態のため項部を後屈しているので鼻の孔が丸見えになっているのです。
このような患者さんが二重術を目的に来院されますが、よく見ると睫毛は黒目にあたっており、正面視でも瞳孔中心がギリギリ見えるぐらいなんてことがあります。このような方に視野検査をすると、上方視が悪いという客観的な検査結果が出るそうです。眼瞼下垂の一つの症状です。当院でもこのような方の手術を行うと、視野が明るくなった、上の方が見やすくなった、など、よい結果になることが多く、おまけに目がパッチリして見た目の雰囲気も良くなったように感じていただくことが多いです。逆さ睫毛もきょうせいすることができます。
ハードコンタクトレンズを長年装着している方に眼瞼下垂が発症しやすいと言われます。この理由として、レンズを外す際、まぶたを強く外側へ引っ張ったりします。腱膜性眼瞼下垂は瞼板と挙筋腱膜の接合部のゆるみなのですが、この動作により、早くこのゆるみを誘発してしまうのではないかと言われます。私もそう思い込んでおりました。重度のアトピー性皮膚炎や花粉症で目をよくこする癖がある人も、物理的な力の反復により、ゆるみが生じるのでしょう。
ハードレンズの外し方は下まぶたを使う方法やスポイトを使う方法などあり、術後はこのような方法にしましょうと説明しています。しかし、一日一回の引っ張る動作ぐらいで下垂が誘発されるのかという疑問と、外し方は下まぶたで取ってるという人もいかにもコンタクトレンズによる下垂という症状でみえる方もいます。どうやら・・・
ハードコンタクトレンズのような厚みのある固いものを装着し、瞬きを繰り返していると、薄い結膜とその次の層にあるミューラー筋や挙筋腱膜が徐々に菲薄化してくるようです。腱膜性眼瞼下垂は瞼板と挙筋腱膜の接合部のゆるみといいますが、確かに挙筋腱膜も非常に脆弱化しているように感じます。ハードほどではないですが、ソフトレンズでも同様です。ハードレンズ装着者の眼瞼下垂発症は20倍高く、ソフトレンズで8倍、また、ハードレンズ装着歴27年以上の人は27年以下に比べて11倍の高リスクとなると、教えていただきました。
術後にコンタクトレンズをやめていただけるのは良いことですが、無理な方は、装着時間をいかに短くするかが、再発予防に重要なことと言えます。
カテゴリ:眼瞼下垂
2018.06.28
先日、第22回MSCSに参加してまいりました。「たるみ」についての講演でしたが、興味深かったので、学んだことをまとめておきます。
皮膚の劣化する原因はもちろん加齢現象なのですが、その原因として活性酸素、紫外線が挙げられます。もちろん喫煙などは言うまでもありません。これに外力が加わるとたるんでいくということです。外力は表情筋の収縮と重力と言えます。また、脂肪や骨が萎縮し、老化顔貌へ変化します。
活性酸素はミトコンドリア内でのTCA回路でエネルギーを産生する際に発生します。活性酸素は通常の酸素より電子が足りない不安定な状況にあり、他の物質から電子や水素を奪い取り酸化させてしまいます。酸化した細胞はアポトーシスに陥り機能不全となります。紫外線は直接原子の結合を破壊し、たんぱく質を破壊してしまいます。
このようにして皮膚のコラーゲンやエラスチンが劣化し、弾力のない、伸びきったばねのような皮膚へ変化します。
さらにこの皮膚に外力である重力が加わると内容を支えきれずたるみが進行。また、表情筋の動きにより、引っ張られ、また折りたたまれると皺がどんどん増えていくということになります。
多くの患者様が、顔の筋トレを頑張っていると自信満々にお話されます。しかし美容外科医なら皆、「表情筋のトレーニングはシワを増やすためのトレーニングだ」と批判します。私はこれまで、以下のように話してまいりました。
表情筋を鍛えても、表情筋でたるむ脂肪を支えているわけでなく、脂肪の下垂は進行します。また、表情筋が伸びきるからたるむというわけでもありません。だから筋トレをしても無駄です。さらに、筋トレをするということは表情しわを作るということになります。劣化した皮膚に皮膚を折りたたむような表情筋トレーニングをすれば、その外力でしわが深く刻まれていくことになっていきます。
今回のお話ではさらに、筋トレの三大原理から否定的な意見をまとめられました。
・特異性の原理・・・トレーニングした筋だけに効果がある。
・可逆性の原理・・・トレーニングをやめると元に戻る。
・過負荷の原理・・・十分な負荷を与えないと効果はない。
ということは表情筋を鍛えるには、鍛えている表情筋を意識してトレーニングをすべきで、常にやり続けないといけなくて、過負荷をかけるようなトレーニング内容にしなければならないということです。こんなことできるのでしょうか・・・。皮筋である表情筋に過負荷なんて簡単にかけられません。
カテゴリ:アンチエイジング たるみ・しわ ボトックス‐表情しわ 院長ブログ
2018.06.28
第33回日本医学脱毛学会に参加しました。初めて参加しましたが、看護師の参加者がとても多く、盛況でおどろきました。今回の内容を復習して備忘録にしておこうと思います。ちなみに上の動画はダイオードレーザーによる蓄熱式脱毛の施術中です。当院では導入していません。
最近こどもの脱毛需要が増加しています。理由の多くは多毛により友達からからかわれたりいじめの原因になるからというものです。中高生になれば、美容的観点が理由となるのですが、今回のテーマは小学生です。脱毛行為に対する恐怖心をいかに取ってあげて、痛くない脱毛を蓄熱式で行うということで共通していました。親御さんを交えていかに説明するかとういことも各院工夫しています。また、痛みのハードル以外にも、日焼け対策、短い施術時間、経済性についても考慮が必要です。
脱毛レーザーであるロングパルスアレキサンドライトレーザーは、アトピー性皮膚炎の痒みを改善させ、その結果、搔把行動が減り病変も改善していくということです。
アトピーの痒みのメカニズムがわかってきました。C線維という感覚神経が通常は表皮内まで侵入していないのですが、アトピーの皮膚では本来表皮にほとんど無いはずの神経成長因子(NGF)が発現して、C線維の表皮への侵入を促進してしまっています。また、本来表皮に多いはずの神経反発因子(sema3A)が減少し、C線維の表皮への侵入を抑制できなくなっています。そのため過敏になり掻痒から搔把行動になり、炎症と色素沈着が遷延します。
アトピーに保湿剤をよく使用しますが、保湿剤は表皮内のNGFを減らし、C線維を減少させ掻痒を減らします。また、光線療法はsema3Aを表皮内に増やし、C線維を減少させます。
ロングパルスアレキサンドライトレーザーも照射後に、表皮内まで侵入していたC線維が減少し、真皮まで退縮していることが示されています。また、表皮内のsema3Aも増加していることがわかっています。
当院でもアトピーの方こそ脱毛レーザーを行っていただきたいと考えています。
2017.11.16
A:0歳からでも可能です。しかし、レーザー治療の適応があるかどうか、また今すぐ治療すべきかどうかなど、診察してしっかりとご説明させていただきます。
A:可能です。しかし、小児の場合は苦痛と体動を伴ってしまいますので、適切な施設をご案内する場合があります。
A:外傷性刺青の場合は一度きりで治療が終了することもありますが、あざの治療は年月がかかります。繰り返しの治療に慣れられましたら1~3か月ごとの通院を要します。
A:保険適応の表面麻酔薬であるエムラクリームを塗布します。これによりある程度痛みが軽減します。これでも苦痛があれば、麻酔注射を行います。面積がごく小さい場合は麻酔なしで施術することも可能です。エムラクリームの塗布では、効果がでるまでに40分程度要します。
カテゴリ:Q&A
2017.11.16
このレーザーで治療可能な保険適応疾患(あざ・母斑・外傷性刺青)についてご紹介します。
あざは生後~小児期に出現する皮膚の病変です。わかりやす分けると赤あざ・青あざ・茶あざ・黒あざというように4つの見た目の色で分けることが多いです。
当院では、治療設備の関係で、赤あざの治療に対応できませんが、それ以外に関しては標準的治療が可能です。また、赤あざに関しても、診断と治療方法の説明、適切な治療施設について、詳しくご説明することが可能ですので、お問い合わせください。
けが・やけどの後に生じる色素沈着についても治療可能です。
アスファルトや鉛筆の芯が皮膚の中に残っているような外傷性刺青の状態も治療可能です。
蒙古斑は生まれつきお尻にある青いあざを指します。皮膚の真皮にメラノサイト(メラニン色素を作る細胞)が増殖した状態のものです。このお尻の蒙古斑は4~10歳で自然に消失していくことがわかっており、治療の対象になりません。しかし、蒙古斑がお尻以外に発生することがあり、これを異所性蒙古斑と呼んでいます。足でも体でもどこでもあり得ます。異所性蒙古斑の中でも以下のようのものは自然消退を望めませんので、治療の対象となります。
・色調が濃い
・広範囲
・境界がはっきりしている
標準的治療方法はQスイッチレーザーと呼ばれる、レーザー治療となります。お子様の場合、小学生になるぐらいになっても消退する傾向がなければ治療を開始します。幼児期より、明らかに自然消退が望めない色調のものですと、すぐに治療を開始することもあります。
Qスイッチレーザー治療は3~6か月おきに、5~10回程度の治療回数が必要です。
片側の顔面にできる青あざです。生後しばらくして少しずつ発症し、思春期ごろに悪化し、社会生活上大きな問題となることがあります。真皮にメラノサイトが散在し、灰色から青色の色素斑ですが、白目の粘膜や、口腔内にもメラニンの増加を確認できることもあります。臨床的に、幼児の小鼻や眉毛の横あたりに青色のあざが小さく出てきて発見されることが多い印象です。
自然に治癒することはありません。過去には手術によって除去し皮膚を移植したり、ドライアイスを押し付けたりと、つらい治療が行われておりましたが、90年ごろからレーザー治療が普及してきました。Qスイッチレーザーが現在の標準的治療方法です。3~6か月おきに、10回程度の治療回数が必要です。
治療開始年齢は、早い方が効果も高く少ない回数で済み、色素脱失や色素沈着などの合併症の率も少なくて済むといわれています。
境界のはっきりした茶色のあざです。生まれつきあるものや、乳幼児期に出現するもの、思春期ごろに出現するベッカー母斑と呼ばれるものなどありますが、見た目に茶色いので診断は簡単です。
治療はQスイッチレーザーが標準的治療なのですが、青あざに比べると有効率が劣ります。無効例は約65%です。著効は17%、改善程度は18%です。これは性別年齢には関連はありませんが、顔・首→体→四肢の順に有効率が下がります。またきれいな円形の扁平母斑より地図状の方が効きやすいといわれています。
日本で保険治療が可能なのはQスイッチルビーレーザーという機種です。
レーザー治療が無効なケースでは手術を選択することになります。部位と大きさによって、切除後の皮膚再建方法が変わりますので、個々にカウンセリングが必要です。
いわゆるほくろです。大小さまざまです。
治療方法は手術による切除やくりぬきと、炭酸ガスレーザーによる除去がスタンダードです。自由診療で治療する場合は炭酸ガスレーザーとQスイッチレーザーを組み合わせたり、Qスイッチレーザー単独で治療することもありますが、真皮内に深く母斑細胞が存在するものが多く、やはり炭酸ガスレーザーによる治療が主となり得ます。また、この場合、治療の傷痕が残存してしまうことを理解して治療いただくことになります。
鉛筆の芯が刺さって黒鉛が残存したり、アスファルトで転倒し、砂の色が残存したりすることがあり、これを外傷性刺青と呼びます。皮膚の中に存在しているものはQスイッチレーザーで治療可能です。
Qスイッチレーザーと呼ばれるレーザー光を照射します。レーザーは皮膚に存在するメラニン色素に対して吸収されます。吸収されると光エネルギーが熱エネルギーとなり組織を壊します。壊されたメラニンは脱落したり吸収されてなくなっていきます。広範囲に施術する場合はあらかじめ表面麻酔クリームなどを使用して痛みを軽減させます。現在の色素性病変の治療で最も有効な治療法の一つです。
保険適応:異所性蒙古斑・太田母斑・扁平母斑・外傷性色素沈着(外傷性刺青)
保険適応外:シミ(老人性色素斑・後天性真皮メラノサイトーシス)・入れ墨・タトゥ
術後経過として以下のことが起こりえます。特に炎症後色素沈着と、色素脱失については、ご理解が得られない状態での治療はお受けいたしかねます。
カテゴリ:母斑(あざ・ほくろ) 院長ブログ
2017.10.29
神経線維腫症1型 neurofibromatosis type1 これをレクリングハウゼン病von Recklinghausen diseaseと呼んでいます。
症状が進行すると難病に指定されます。DNB分類stageⅢ以上
粉瘤にしてはやわらかく、poreもない。また、大小さまざまで、盛り上がりの大きいものから平坦に近いもの、垂れ下がるぐらい突出したものなどが、全身に多発した皮膚の腫瘍を認めます。これは、神経線維腫の可能性があります。さらに、次の症状があれば診断が確定的です。
扁平母斑と呼ばれる茶色のあざが、大小さまざまに認めます。これは扁平母斑ではなく、カフェオレスポットと呼ばれます。6個以上で本症と診断できます。
3000人に1人の頻度で、常染色体優性遺伝、つまり、必ず遺伝して発現します。しかし半数以上は突然変異といわれます。
・進行する疾患なので、皮膚の神経線維腫がどんどん増えていき、社会生活上、整容的な問題となります。1000個以上できると難病指定を受けることになります。
・脳や脊髄の神経に神経線維腫や、髄膜腫が発症し、中枢神経障害や痙攣などの発症することも考えられます。
・知能障害や学習障害を有していることがある。
・子供に遺伝する。
・神経線維腫の悪性化はままれであるが考えておかねばならない。
根治療法はありません。上記の問題が生じたときに対症療法を行うことになります。
私たち形成外科領域では、目立つ部位の神経線維腫を切除することと、カフェオレ斑をレーザー治療などすること(再発することが多いですが)などです。
カテゴリ:母斑(あざ・ほくろ) 皮膚良性腫瘍(おでき)
2017.10.26
当院では、医療アートメイクを行っています。眉・アイライン・リップはコスメティックに、また、乳輪乳頭再建、傷痕カムフラージュ、化学療法後の眉毛・ヘアラインの再建などにも応用しています。
アートメイクという技術は、医療行為と法的に認められており、現在、医療機関で医師の責任のもとでしか施術できません。
・レーザーで消去できること。・MRI撮影時に問題とならないこと。・酸化鉄を用いないこと。・アレルギーを発症する可能性を少なくすること。・完全オーガニックであること。と、教わりましたが、今回の勉強会では終始これらのポイントについて、深く掘り下げる内容でした。ひとつづつ見てみます。
これらをレーザーで完全に消すことができるのは全症例のわずか1.26%のみです。著効例は多くあります。
色や部位、色素の深さなどによって、レーザー治療を何回程度行うと良いか、事前に予測するツールがあるようです。黒は取ることができます。また赤も取れます。肌色は無効です。後に述べるように黒色化が懸念されます。深いものも当然取れにくいです。深いものを治療すると瘢痕が残ります。逆に深いものは入れる時点で瘢痕となっているため、レーザーが効きにくいです。これらの理由で除去すると瘢痕のみ残ります。これをゴーストイメージと言います。彫った絵柄や名前など、わかってしまいます。重ね塗りも取れにくいです。
レーザー治療により色素が粉砕されます。ピコ秒レーザーはより細かく粉砕可能です。細かく粉砕した方が、マクロファージやリンパ組織での輸送処理がしやすく、消えやすいです。レーザー後はしばらく時間を空けた方が輸送されて薄くなります。
・痛み ・水疱形成 ・痂皮形成 ・点状出血(特にYAG) ・蕁麻疹様反応(色素の変化による) ・色素沈着 ・色素脱失と白毛 ・ゴーストイメージ ・アレルギー反応(局所、全身の光アレルギー反応) ・黒色化(後述しますが茶色肌色白色を発色する鉄とチタンにレーザー照射すると黒くなります。一見黒に見えても、重ね塗りで2重に交じっていたりすると起こりますので注意)
1最小限の量を 2重ねることなく 3黒色化しない色素で 4浅く入れる
MRIが影響するには、静磁場の影響、傾斜磁場の影響、RFパルスの影響の3つが考えられます。静磁場では吸引力によるトラブルが問題となりますが、アートメイクに関しては磁性体の量が微量すぎて問題になることはありません。問題と考えられるのはRFパルスです。誘導電流が発生するため、ループができると発熱します。これは磁性体とは関係ないので、アートメイクのみで起こるトラブルではありません。アートメイクに関して言うならば、ループになっているデザインのタトゥで1度以下の温度上昇があるようです。とういことで理論上も実験場もあまり問題とならないようですが、過去の文献にはやけどの報告はあります・・・
色素は色素原料と水とグリセリンとアルコールでできています。色素原料には水に溶ける染料と水に溶けない顔料がありますが、アートメイクには顔料を使用します。顔料にはオーガニックとインオーガニックがあります。
植物由来すなわち有機物でアゾ化合物です。これは発色が良く、すべての色を表現で、安価です。しかし、レーザー治療すると色が変化することや、アレルギーの原因となりやすいこと、また皮膚内で化学変化し、特定芳香族アミンとなって発癌作用、アレルギー作用があるといわています。そこでインオーガニックの色素を使わざるを得ない現状があります。
無機物でカドミウム、水銀、鉛、コバルトなどもあるのですがこれらは発色は良いが健康被害が多いことで有名です。実際にはカーボンブラック(これも発がんの可能性あり)酸化鉄、二酸化チタンなどを使用します。
黄色や赤を発色する水酸化鉄や酸化第二鉄、酸化チタンなどで肌色として入れた場合、これにレーザー治療を行うと黒色化するという問題です。問題となる事例は古いアートメイクを消すために肌色を重ねて消すケースがあるということです。その部位はレーザー治療を知らずに行ってしまうと黒色化してしまうということに注意しないといけません。レーザーによる消去は問診の上、試しのの小範囲から始めるべきです。
カテゴリ:アートメイク
2017.10.16
「にほんにこだわる」をテーマに、新潟・銀座でクリニックをされている野本先生が会頭の元、銀座で開催されました。
野本先生の開発されたビューティフルスキンミネラルファンデーションは、当院でも大変多くの患者様にご愛用していただいており、また、野本先生は独自にアイウェアの開発や美容和漢学の普及、色彩学を取り入れたスキンケアなど、大変個性・感性豊かに活動されている方で、注目のDrと思っています。
学んだことと私の私感を交えて書き留めます。
Qスイッチルビーレーザーは日本が独自に伸ばしてきた機械。アメリカにルビーレーザーは普及していません。海外はKTP・YAGレーザーを中心にして、最近はアレキサンドライトレーザーが中心になっています。また、CO2レーザーで十分だという考え方もあるとのことです。
当院ですが、Qスイッチレーザーは当院には未導入だったのですが、年末に導入予定です。切れ味の良い日本製のルビーか、世界的メーカーのアレキサンドライトか、当院の患者様に合った機器を選択中です。
韓国・台湾ではIPLよりもレーザートーニング真っ盛りというお話も伺いました。当院ではレーザートーニングを行っていませんが、こちらも導入を検討中です。
美容医療の市場ですが、世界的に1位アメリカ2位ブラジル3位日本4位韓国。特筆すべきことはその中でも手術:非手術(機器治療や注入治療)を見たときに、日本は1:1で世界一非手術に傾いています。2位アメリカ3位韓国4位台湾5位ブラジル。
50歳以上の1%が罹患しているといわれる加齢性黄斑変性症は、萎縮型と浸出型、さらには前駆型があります。浸出型にはレーザー治療など、新生血管を抑える治療が可能です。しかし萎縮型と前駆型は治療法はありません。生活習慣の改善が大切になります。喫煙、肥満、高血圧、動脈硬化、光曝露などを避けることで、酸化ストレス⇔慢性炎症の悪循環を防ぐという考え方です。さらに抗酸化サプリメントが大変重要で、眼科医もサプリメントを勧めることがあるそうです。ビタミンACE・亜鉛・銅で発症率を25%抑制、ルテインとゼアキサンチンというカロテノイドで18%進行を抑制するとのことです。ルテインは黄斑に存在しています。
最近は肝斑は表皮に病変の首座があるというより、真皮機能の状態を改善しようという意見があります。真皮線維芽細胞からSCFやVEGFなど、様々なサイトカインが発せられ、表皮メラノサイトを活性化する機能異常に対して、真皮にロングパルスヤグレーザーで治療することが有効と言われるようになりました。VEGFが関与していることから血管病変と考えると血管病変もターゲットにできるロングパルスヤグレーザーの重要性がわかります。当院ではリフトアップレーザーというロングパルスヤグレーザー治療があります。タイトニング+肝斑治療で取り組んでいただけると良いと思っています。と言っても本当の肝斑はシミで来られる患者様の5%、60%は老人性色素斑です。
肝斑は瘀血(おけつ)桂枝茯苓丸+トランサミンで。
老化は陽から陰(機能の衰え)、実から虚(調節の衰え)
五臓(心・肝・脾・肺・腎)脾は消化器系を表しています。腎は先天的な気、水分内分泌を表します。また、肝は自律神経を表します。五臓は互いに関与します。ストレスは肝を不調に肝の不調は脾虚となり腎虚となります(老化)(ストレスと過食と寿命減)
私には和漢学はちょっと難しいですが、美容医療には未病に対するアプローチの一つとして、大変重要であることは間違いありません。
漢方に関しては私の同期・こやまかわせみクリニック小山賀継先生にお願いします。