院長ブログ
Diary of Gifu Skincare Clinic
2014.08.22
ホントです。
重度の糖尿病、長期の糖尿病でリスクが高くなります。もちろん、糖尿病以外の病気でも足が腐る病気があります。
医学的に「壊疽」とよびます、「糖尿病性壊疽」です。腐るというのは、細胞、組織、器官として、死んでしまいった状況を言いますが、必ずしもそこに雑菌がついて腐敗していなくても、部分的に死んでしまえば壊疽です。
さらに厳密に言いますと、「壊疽」は足や手の指が死んでしまったもの言います。それ以外の部位が死んでしまったのは「壊死」と呼びます。
糖尿病の方は、血管が狭くなり、心筋梗塞や脳梗塞を起こすリスクが高くなります。狭くなる血管は心臓や脳だけではありません。足の血管も狭くなります。足への血流が滞ると、細胞が生きていけません。この状況をPAD末梢動脈疾患と呼び、痛みと、治らないキズができ始めます。この状況をCLI重症下肢虚血と呼びます。
そしてついにはキズが黒く変色し、かりかりのミイラ状態になっていきます。
前述と別の理由で足が腐ることがあります。こちらのパターンはほんとに腐って大変な悪臭を放つことがあります。
血管が傷んで血流が悪ければ、その周囲の神経も調子を崩します。これを糖尿病性神経障害と呼びます。すると、足の場合、足の感覚が鈍くなります。また、血管の太さの調節をする自律神経もダメージを受け、前述とは逆に無駄に血液の流れが良くなりすぎたりします。(A-Vシャント)さらに、糖尿病の方は、免疫力が低下しており、ばい菌感染に弱い体です。(易感染性)
そこで、もし靴の中に石ころが入っていたり、机の角で足指をぶつけたりしたとしても、痛みに鈍いので傷ができても放置してしまいます。そこにばい菌感染をすると、栄養となる血液もたくさん供給されているため、一気に感染が広がり、ばい菌に負けて足が腐り始めます。
さらにひどくなると、敗血症といって全身にばい菌が感染して、重篤な状況になります。
血液の流れが制御できない足では、骨の細胞に栄養が行き過ぎて骨の形が変形します。変形する形はいろいろありますが、多くはハンマートゥやシャルコーフットという変形をします。すると、歩けばある一か所に体重の負担がかかります。するとタコができ始め、魚の目になります。タコって、固いです、この固いものを踏み続けると、そこに穴が開いてきます。つまり治りにくいキズができて、感染してしまうのです。
予防が大切です。治療と予防について、また後日詳述しようと思います。
このような糖尿病性壊疽も、形成外科の日常診療で頻度の高い疾患です。そして、内科なくして
この疾患を治療することは不可能です。
カテゴリ:治りにくいキズ-足壊疽
2014.08.22
漏斗胸という疾患は、形成外科診療の中でも時々遭遇する体幹部先天異常です。
幼児期には胸の中央(みぞおちのあたり)が漏斗状にへこんでいることに気づきます。
成長とともに凹みが右側に偏移してくることもあります。(左右非対称漏斗胸)
肺活量が標準より少ないとか、心電図で異常がみられることもありますが、整容面以外は無症状のことが多いです。
原因は肋軟骨の形成異常です。
治療は、手術以外の方法と、手術による治療があります。手術以外の治療は、ごく軽度の時や、手術を受けたくない方に適応されますが、なかなか大変です。へこんだ胸に特殊な器具を付けて、皮膚ごと肋軟骨部を密閉吸引する治療です。バキュームベルとか、いくつか商品が出ております。
●ラヴィッチ法
今回は手術についてのお話です。以前よりへこんだ胸を切って開けて、肋軟骨を形成して凹みを治すというラヴィッチ法と呼ばれる手術があります。長時間の手術で体に負担があることと、きずあとがガッツリ残る(それほど目立たなくはなってくるのですが、胸の中央部に肋軟骨に沿って山型の瘢痕がわかります)のが、大きな問題点でした。
●ナスの手術
この10年ぐらいでナス法という手術が普及しました。胸の脇に小さなきずを開けて、そこから心臓の前(へこんでいる肋軟骨・胸骨の下)にステンレス製もしくはチタン製の鉄筋のようなプレートを挿入して矯正した状態を保つようにします。もちろん全身麻酔です。また、子供の手術であり、成人(思春期以降)の適応については議論があります。
この手術を始めたのは9年前ですが、わずか1時間程度で終わり、きずあとも小さく、きれいな胸郭形態になるので、大変感動したのを覚えています。それ以来、全国でナス法手術が好きな先生の集まる研究会に参加したり、著名な先生の手術を見学したりして、毎年夏休みになると、何人か患者さんの手術をしていました。(勤務医時代)
さて、素晴らしい手術であるナス法なのですが、実際の現場で難しいなあと感じることも話します。
●矯正のプレートは、2~3年で抜去するため、2回手術が必要です。
その間、胸部にプレートが入ったままです。
皮膚の下に金属があるので、ぶつけたりして切ってしまうと露出や感染の恐れがあります。装具で保護することもしています。
飛行機に乗る時にはセキュリティーチェックで証明書を見せなければなりません。
万が一、心肺停止したら、圧迫式心臓マッサージができません。最寄りの医療機関にわかるよう、証明書は携行してもらうのですが、じゃあ、万が一があったからといって一瞬で抜くことはできません。開胸心マッサージしか、手がありません。
このプレッシャーについて、患者さんはあまり何も言われませんが、心肺蘇生が仕事の我々にしてみるととっても怖い状況です。
●1回目の手術、プレート挿入。痛みと運動制限があります。
術後は、矯正プレートでへこんだ胸を持ち上げています。支えにしているのは固い肋骨ですから、ここがとても痛いです。麻酔科と連携して、痛みのコントロールに取り組むこともありますが、1週間程度でだいぶ動けるようになります。どのように痛みのコントロールをするか、術前に主治医としっかり話した方が良いと思います。
運動制限も3か月から半年は注意です。挿入したプレートの周りが固まるのに半年ぐらいかかりますが、それまでにバーがずれたり、移動されてはいけません。特に体をねじるようなマット運動などは長期に制限します。走ったりするのは比較的早くから認めています。
●2回目の手術、プレート抜去。大変なときもあり。
患者さんにしてみると、抜く手術はそれほど痛みもありませんし、回復も早いですからすぐ退院になります。しかし、我々術者は、時々大変な時があります。それは肋骨が成長しているので、プレートが食い込んでいることがあるからです。
感じるのは特に斜めにプレートを入れた時の下側になってる固定具にかぶさるように骨化していることがあります。手動で骨をかじり取ったり、電動ドリルで削ったりして外さないとびくとも動かないので、小さな傷でがんばると、思ったより時間がかかってしまったなんてことになります。
>最近はコンピュータ技術が進んでいます。この手術も力学的にどの位置にプレートをどれだけ入れるかなど、解析したり、結果を予想したりするようになってきました。左右非対称や、低形成を伴っている場合などはそのデザインが難しいと思います。この手術がますます精密な手術で、安全に行われるよう、期待したいと思います。
カテゴリ:先天異常-体幹部
2014.08.10
形成外科で日常的に治療している先天異常に、臍突出症があります。
おへそが飛び出て一般に”でべそ”と言われます。
おへそはもともと臍帯の付着部位ですから、それが脱落したあと、瘢痕(きずあと)となったのがおへそであります。
この瘢痕が盛り上がっているのみの場合と、この瘢痕の下の壁(腹壁)が弱く、腸が押し出してくるでべそ、臍ヘルニアと、2通りのパターンがあります。
臍ヘルニアのお子様をお持ちのママはちょくちょくお見かけします。私の外来にかかってくれている方は、生後まもなく、小児科からご紹介され、圧迫療法を開始します。しかし、小児科で圧迫療法についてお話は聞いたものの、それっきりっていうパターンも結構多いように見受けられます。
そういうママが、うちの子は2歳ですが、今後どうしたらいいんですか、と質問されます。
臍ヘルニアの場合は生後すぐに圧迫療法といって、コインを貼り付けて圧迫しておくよう、指導して、経過を待つことをします。さすがにコインでは何の工夫もないので、最近は高性能なスポンジと高性能なテープや粘着フィルムを使用します。ヘルニアの大きさによりますが、2歳までにかなり高率に治癒すると言われています。しかし、2歳を過ぎると、自然治癒の可能性が低くなってきます。
ちなみにヘルニアのない臍突出は圧迫しても治りません。
では、2歳を超えたらいつ手術するか。放置してもほぼ問題ないので、見た目が気にならなければそのままにしても良いと思います。嵌頓ヘルニアといって、腸が押し出されたまま引っかかってしまうとまずいのですが、この頻度は少ないとされています。
★2歳までは圧迫や経過観察で待ちます。
★2歳を過ぎたら臍形成術の手術をします。
★しかし、整容的観点から手術を決めればよいと思います。
この判断が難しいときがあります。
たとえば、就園するとプールなどで他のお子様の目に触れるのが心配っていうのも理由です。
しかし、2歳の手術は全身麻酔です。そこまで今やるべきか、と思う方もいます。高学年以上になると、局所麻酔でも可能な手術です。
また、症状が軽い場合(臍としては、軽くは窪んでいるが、腹壁が弱く、ヘルニアとして軽度膨隆あり)など、迷います。
主治医との相談です。
ちなみに作る臍の形ですが、形成外科医は結構みんなこだわって作ってるんではないでしょうか。
(以下、形の分類名は雑誌形成外科56巻:11~17,2013を参考にしています。)
やはりどうせ作るなら縦べそですか。アーモンド型です。縦べそを作る方法も数多く発表されています。
縦長で上向きの臍は一番人気があります。たしかに、へそピアスの施術をやっていると、アーモンド型の方は、割と自慢げにおへそを出して見せてくれるのですが、わずかな臍突出が残っている方や、オーバル型と言って正面を向いている楕円のタイプはそれを隠したくてへそピアスを開けたいと言って来院される方が多いです。
アーモンド型は大人に多いタイプですが、思春期前ぐらいはオーバル型が多いのではないでしょうか。
さらに幼少になると、シャネル型(シャネルのマークに似ているので)と言って臍の上縁と下縁に土手があるタイプや、ベル型といって、土手が下縁のみで上向きの若干横長?の臍が幼児には多いのではないでしょうか。
私は2歳の手術ではわりとベル型を作ってきました。やはり、周りのお子様の形に合わせてということと、手術方法が浸透している方法であること、簡便で上手くいくと作った臍に見えません。またこの方法は(鬼塚法など)臍の周りの皮膚は一切傷つけません。
しかし、臍の周りに傷痕が残る方法でも、縦型にこだわる先生もみえます。
これも主治医と相談ですね。ただ、その先生の一番慣れた方法になることが多いのかと思います。
カテゴリ:先天異常-体幹部
2014.08.07
❙ほくろの取り方。
ほくろは母斑細胞母斑といいまして、あざの一種のような位置づけですが、皮膚科学的には良性皮膚腫瘍とされ、保険診療の場合、手術で皮膚腫瘍摘出術として治療がなされます。治療法や治療機器、治療動機によって保険診療が適応できないこともあります。
治療法は上記の手術により取り去って、傷を縫って閉じる以外に、炭酸ガスレーザーやエルビウムヤグレーザー、高周波メスなどで焼灼して、蒸散させて取る方法もあります。蒸散させるとその部位は傷になりますが、軟膏などを塗り、傷を解放した状態(オープン)で治していきます。
❙ほくろを取ると、あとは残るか。
患者さんの中には、美容皮膚科や美容形成外科へ行けば、ほくろを跡形なく取り去ることができると思っている方が見えます。
それはかなり厳しいと思います。私はほくろを取る場合は、多少でも、きずあとが残るとお話しています。しかし、なるべく目立たないようにするために努力する約束はいたします。
ほくろの種類にもよりますが、ほくろのメラニン色素は皮膚の深いところ(真皮)に存在することが多いです。この、真皮に傷をつけることは、しかも深ければ深いほど、きずあとがはっきりと残ります。
なかにはミーシャ型といって、盛り上がったほくろですが、黒い色素は表面のみにあるということがあります。こういった場合は、ほくろの細胞は残ってしましますが、蒸散を最小限にする(表面の黒いところだけ削る)と、比較的きずあとが残らず、黒色の再発がない状態にできます。
逆に真皮のとても深くに、場合によってはその下の脂肪組織内まで、メラニンが落ち込んでいる母斑細胞母斑に遭遇することもあります。この場合は蒸散してもきずあとがしっかり残ります。取りきらないと、色が表面に再発してくる結果となります。
また、どんな種類のほくろであれ、手術で切り取るとなると、手術のきずあとが残ります。
❙あとを目立たなくするには
部位と大きさ、予想される深さによって、ほくろの取る治療法を変えるのが良いと思います。
腕や胸、腹、背中などで大きくて深いものは、蒸散させてオープンで治療するときずがしっかり目立ってしまい、中にはケロイド状(正確には肥厚性瘢痕といいます)になることがあります。
切除手術を行って、ていねいに縫合し、術後もきずあとにテーピングを行ったりしてフォローすることが大切です。
顔面ではおでこや頬は切除でもよい結果のことがあります。しかし、鼻、目の近くで縫合すると引っ張られてパーツがゆがんでしまう場所は蒸散してオープンにする方が良いことがあります。
また、まぶたや鼻はオープンでも傷は綺麗に治りやすいことがわかっています。
しかし、そういった部位でもあまりに大きいと、オープンでは抵抗がありますので、こういった時は手術でくりぬいて、縫合糸を巾着の口を締めるように縫って、キズを小さい状態にして半オープンで治します。
カテゴリ:母斑(あざ・ほくろ)
2014.07.29
カテゴリ:皮膚良性腫瘍(おでき)
2014.07.20
体のどの部位でも、皮膚は角質に皮脂膜、その他保湿成分を含み、バリア機能を保つように機能しています。これが、外的刺激、疾患、外傷などでドライスキンになれば、さらに様々な皮膚トラブルを起こします。
保湿は褥瘡ケアに必須、もちろん、美容にも必須。そこで保湿剤はどのように選択しますか?ここでは化粧品の細かい話は割愛し、褥瘡や皮膚疾患に使用する薬剤を考えてみます。
形成外科医は傷に様々な外用薬を塗布します。それらの基剤としてワセリンは大変使いやすく、組み合わせるドレッシング(ガーゼの類ですが)にもよりますが、浸出液が少なくなってからは万能薬的に使うことができます。もちろん、専門的な話をすれば、傷や皮膚の状態によってさらに適切な外用薬、ドレッシング材はあります。ワセリン自体には薬効はないので、ひとまず経過を見たい時にも使えますし、傷がほとんど治ってから、ドライスキンの予防としてワセリンでそのまま保湿を続けてもらうことも多々あります。
私もワセリン信者になって、とうとう風呂上がりの自分の顔にも保湿目的で塗布するようになりました。しかし、最近、プロテアジャパンのエンビロンできちんとケアするようになったのですが、みるみる肌の状態が良くなりました。エンビロンについてはまた別で触れますが、やはりワセリンの保湿は良くなかったということに気づきました。
ワセリンは冬の風呂上がり、体も温まって既にドライになった皮膚に塗るのは勧められません。ワセリンは皮膚の保護作用は強いですが、水分を含ませる作用は乏しいのです。しかもローションやクリームに比べて硬いので塗り伸ばしに強く皮膚を摩擦してしまい、シミには絶対よくありません。
✴︎エモリエント効果・・・皮膚表面に油膜を作り水分の蒸散や汚染を防止します。ワセリンがその代表です。
✴︎モイスチャライザー効果・・・水と結合し保湿するものです。グリセリンや尿素ですが、いわゆるローション基剤のもの、例えばヒルドイドローションなどです。
お顔のお手入れはローション、乳液、クリームといった順序を、何気無く実践していますが、使う薬剤、化粧品の性質を理解して、バランス良く組み合わせることが大切です。
褥瘡診療においては、確かにカサカサならまずモイスチャライザーを使用し、エモリエント効果のあるものを組み合わせていくべきです。ドライスキンが軽ければ、保護目的にワセリン単剤で使うこともシンプルでわかりやすく、他剤の影響を考慮しなくても良いので合理的。稀にワセリンにアレルギー反応を起こす方もみえるので注意が必要です。
カテゴリ:治りにくいキズ-褥瘡(床ずれ)
2014.07.20
カテゴリ:治りにくいキズ-褥瘡(床ずれ)