院長ブログ
Diary of Gifu Skincare Clinic
2026.04.26
先の日本形成外科学会のもう一つのハンズオンセミナーで縫合糸に関連するものに参加しました。
当院では後述の糸針は使用していましたが、その理論について理解が十分でないと感じていました。
学んだことについてい、下記にまとめてみました。
形成外科における創傷治療では、「どの糸を使うか」と同じくらい、どの針を使うかが重要です。 実際、縫合針の形状や特性は、組織の扱いやすさだけでなく、最終的な**瘢痕の美しさ(仕上がり)**に大きく影響します。 今回は、近年注目されている 真皮縫合用の「コンパウンド針」 表皮縫合用の「クロソイド針」 について、従来針との違いと臨床的メリットを、形成外科医の視点から解説します。
豚の皮でデモンストレーションしています。ヒトではないですよ。■従来の縫合針の課題とは? 一般的に使用されてきた「強湾針(カーブの強い針)」は、扱いやすい反面、いくつかの課題があります。 真皮を点で捉えるような刺入になりやすい 組織を十分に拾えないことがある 創部に局所的な張力が集中しやすい 結果として、瘢痕が広がる・目立つ原因になる 形成外科では、「いかに張力を分散させるか」が非常に重要です。 この課題を解決するために設計されたのが、コンパウンド針です。 ■コンパウンド針とは?|真皮縫合の精度を高める設計 コンパウンド針は、針の先端と根元で湾曲の強さが異なる特殊な構造を持っています。 この設計により、従来針では難しかった以下の操作が可能になります。 ●真皮を「面」で捉える 従来は点での把持になりやすかった真皮組織を、より広い面として確実に拾うことができます。 ●一定の深さで安定した刺入 針先の設計により、真皮層へ適切な深さで均一に刺入しやすくなります。 ●組織を平行に扱いやすい 組織のズレを抑えながら、自然な位置関係で縫合が可能です。 ■臨床的メリット これらの特性により、 創部の張力が分散される 創縁の段差が出にくい 瘢痕の拡大や肥厚を抑制 といった効果が期待できます。 つまり、コンパウンド針は**「より美しい傷跡を目指すための針」**と言えます。 ■クロソイド針とは?|操作性を飛躍的に高める表皮縫合針 クロソイド針は、数学的な曲線(クロソイド曲線)を応用した、連続的に曲率が変化する針です。 一見するとわずかな違いですが、実際の操作性には大きな影響を与えます。 ■従来針との大きな違い 通常の湾曲針では、 刺入時 抜去時 ともに手首の回内・回外を伴う動きが必要です。 しかしクロソイド針では、 ●抜針動作が非常にスムーズ 針の軌道が自然に変化するため、回転操作を最小限に抑えて抜去可能 ●手首の負担軽減 術者の動きがシンプルになり、長時間手術でも疲労を軽減 ●狭い術野でも有効 スペースが限られる部位でも、無理な操作をせずに扱えます ■逆クロソイド針のメリット さらに応用として、「逆クロソイド針」も有用です。 刺入は直針のようにシンプル 抜去時はクロソイドの特性でスムーズ つまり、 **「入れやすく、抜きやすい」**という両立が可能になります。 これは、 顔面などの繊細な部位 狭い創部 角度制限のある縫合 において非常に有効です。 ■縫合針の選択が瘢痕を左右する 形成外科において、縫合は単なる「閉じる作業」ではありません。 組織をどのように扱うか 張力をどう分散させるか 微細なズレをどこまで抑えるか これらすべてが、最終的な瘢痕の質に直結します。 ■まとめ|より美しい仕上がりのために 今回ご紹介した2種類の針は、それぞれ明確な役割を持っています。 コンパウンド針 → 真皮をしっかり捉え、張力を分散し、瘢痕を美しくする クロソイド針 → 操作性を高め、正確でスムーズな表皮縫合を可能にする これらを適切に使い分けることで、 より精密で、より美しい創部の仕上がりが実現できます。 当院では、こうした細部にまでこだわり、 エビデンスと技術の両面から、最適な治療を提供しています。写真は豚の肉です。
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