院長ブログ
Diary of Gifu Skincare Clinic
2021.02.22
異所性蒙古斑に対してレーザー治療する場合に考慮していることで最も重要なことは、合併症(副作用)を起こさないことです。後述しますが、効果を出そう!とするのは合併症のリスクを高める上に、効果が上がるということも無いだろうからです。
・照射後の炎症後色素沈着は自然消退していくものの、その発生率が40%程度あります。
・照射後の色素脱失(正常な肌色よりも白くなってしまい、治りにくい)においては20%~45%程度と報告されています。また、色素脱失は四肢よりも体幹に起こりやすい合併症です。
顔面の青あざである太田母斑は早期からの治療で効果が出やすい傾向にあります。異所性蒙古斑は早期に治療すると治療回数が少なくて済むという考えもありますが、効果に関してはいつ治療をしても変わりないようです。本来自然消退傾向のあるものですので、強いてレーザー治療をせず、経過観察をしてから適応を考えても構わないのです。当然副作用を起こすことはありません。
また、レーザー治療の間隔を詰めることで、炎症後色素沈着の引きが悪い時に照射する可能性があり、さらなる炎症後色素沈着を助長したり、強く反応して色素脱失するリスクが高くなります。したがって、治療間隔は6カ月程度は空けて行った方が無難との考え方になってきました。
効果を出そうとすると高出力で照射したくなりますが、合併症のリスクが高くなります。照射時にわずかなIWPが見られる程度の低出力照射で合併症のリスクを減らすべきで、自然消退傾向もあることですから、そこに相乗する程度の効果を狙えば満足する結果につながると考えた方が得策です。
カテゴリ:形成外科 母斑(あざ・ほくろ) 院長ブログ
2021.02.02
当院のQスイッチアレキサンドライトレーザーはキャンデラ社(アメリカ)のもので、キャンデラ社が定期的に学術セミナーを行っています。今月は異所性蒙古斑について、河野先生がご講演されています。当院でも異所性蒙古斑の治療は実施していますので、内容の多くは我々もよく知っている内容でしたし、新しく知るところは少ないですが、大変うまくまとまっているご講演でした。主な内容を分かりやすくまとめてみました。
生まれつきのアザは形成外科で日常的に遭遇する疾患です。青色のアザの代表が蒙古斑です。紀元前、ヒポクラテスの記載には、妊婦が腹をぶつけたことによってできるアザだとされていましたが、関係ありません。
お尻にできる蒙古斑は、自然に消えていくことが多いようです。しかし、お尻以外に出現した蒙古斑(異所性蒙古斑と呼びます)は、そうとは限りません。もし、異所性蒙古斑が成長しても消えずに残るものだったら、治療を要する場合があります。レーザー治療が第一選択です。しかし、自然に消える可能性があるなら治療せずに経過を見ることもあるかと思います。消えないとわかっているならば治療したい、治療したいならいつからするのが良いか。という疑問が出てきます。
・体や四肢に多発しているもの
・10㎝以上の大きいもの
・濃いもの
・お尻以外にある異所性蒙古斑
消退傾向のある、異所性蒙古斑は0歳から1歳にかけてでも薄くなっていくものがあります。そして6~10歳で消えていきます。上記に挙げたようなものは残存し全体の4~5%に当たります。また肩にできる青あざで伊藤母斑がありますが、こちらは自然消退はしないので、鑑別が重要です。
レーザー治療ですが露出部にある異所性蒙古斑は非露出部よりも治療が良く効きます。
レーザー治療は3か月に一度行うのが保険適応となっていますが、色素脱失という、色が白抜けする合併症を30%~60%に起こり得るため、(顔の青あざである太田母斑は色素脱失しにくく大変綺麗になるのですが)これを防ぐために最近では治療間隔を6か月程度まで伸ばすことも勧められています。治療については今後更新していきます。
カテゴリ:母斑(あざ・ほくろ) 院長ブログ
2019.04.06
先日、笠松にある松波総合病院にて、健やかネットワークのセミナーがありました。この日のテーマは「眼瞼下垂」と「形成外科のできること」でした。眼瞼下垂は形成外科疾患の中でも大変ポピュラーな疾患で、ある程度治療方法も確立されています。しかし、更なる手術方法の改良や、基礎医学(神経生理学)的な研究も進化しつつある、興味深い分野です。
松波総合病院形成外科部長の北澤先生のご講演を拝聴し、面白かったことを備忘録として記したいと思います。
自覚症状として、まぶたの開けづらさや重い感じ、上方視野の悪化、まぶしい感じ、二重の乱れや目の上のくぼみ、眉毛の挙上、おでこのしわの悪化、そして、頭痛や肩コリ等々・・・これらは教科書的に言われる症状です。そこにもう一つ、あごを挙げてしまうということを示されました。専門用語でいうと項部をやや後屈し、下顎が挙上された状態で、眼瞼が挙がっていないから、眼球を下方視ぎみにして見てしまうということでしょう。眼瞼下垂の肩こりについては、眉毛を挙げてしまうため、前頭筋から帽状腱膜さらに僧帽筋まで緊張してしまうからと理解しておりましたが、項部後屈した姿勢はさらに僧帽筋の循環を悪くし肩が凝ってしまうのだろうということでした。このことは、臨床写真からもよくわかることで、術後の顔写真は鼻の穴が目立たないのに対し、術前は眼瞼下垂状態のため項部を後屈しているので鼻の孔が丸見えになっているのです。
このような患者さんが二重術を目的に来院されますが、よく見ると睫毛は黒目にあたっており、正面視でも瞳孔中心がギリギリ見えるぐらいなんてことがあります。このような方に視野検査をすると、上方視が悪いという客観的な検査結果が出るそうです。眼瞼下垂の一つの症状です。当院でもこのような方の手術を行うと、視野が明るくなった、上の方が見やすくなった、など、よい結果になることが多く、おまけに目がパッチリして見た目の雰囲気も良くなったように感じていただくことが多いです。逆さ睫毛もきょうせいすることができます。
ハードコンタクトレンズを長年装着している方に眼瞼下垂が発症しやすいと言われます。この理由として、レンズを外す際、まぶたを強く外側へ引っ張ったりします。腱膜性眼瞼下垂は瞼板と挙筋腱膜の接合部のゆるみなのですが、この動作により、早くこのゆるみを誘発してしまうのではないかと言われます。私もそう思い込んでおりました。重度のアトピー性皮膚炎や花粉症で目をよくこする癖がある人も、物理的な力の反復により、ゆるみが生じるのでしょう。
ハードレンズの外し方は下まぶたを使う方法やスポイトを使う方法などあり、術後はこのような方法にしましょうと説明しています。しかし、一日一回の引っ張る動作ぐらいで下垂が誘発されるのかという疑問と、外し方は下まぶたで取ってるという人もいかにもコンタクトレンズによる下垂という症状でみえる方もいます。どうやら・・・
ハードコンタクトレンズのような厚みのある固いものを装着し、瞬きを繰り返していると、薄い結膜とその次の層にあるミューラー筋や挙筋腱膜が徐々に菲薄化してくるようです。腱膜性眼瞼下垂は瞼板と挙筋腱膜の接合部のゆるみといいますが、確かに挙筋腱膜も非常に脆弱化しているように感じます。ハードほどではないですが、ソフトレンズでも同様です。ハードレンズ装着者の眼瞼下垂発症は20倍高く、ソフトレンズで8倍、また、ハードレンズ装着歴27年以上の人は27年以下に比べて11倍の高リスクとなると、教えていただきました。
術後にコンタクトレンズをやめていただけるのは良いことですが、無理な方は、装着時間をいかに短くするかが、再発予防に重要なことと言えます。
カテゴリ:眼瞼下垂
2017.11.16
このレーザーで治療可能な保険適応疾患(あざ・母斑・外傷性刺青)についてご紹介します。
あざは生後~小児期に出現する皮膚の病変です。わかりやす分けると赤あざ・青あざ・茶あざ・黒あざというように4つの見た目の色で分けることが多いです。
当院では、治療設備の関係で、赤あざの治療に対応できませんが、それ以外に関しては標準的治療が可能です。また、赤あざに関しても、診断と治療方法の説明、適切な治療施設について、詳しくご説明することが可能ですので、お問い合わせください。
けが・やけどの後に生じる色素沈着についても治療可能です。
アスファルトや鉛筆の芯が皮膚の中に残っているような外傷性刺青の状態も治療可能です。
蒙古斑は生まれつきお尻にある青いあざを指します。皮膚の真皮にメラノサイト(メラニン色素を作る細胞)が増殖した状態のものです。このお尻の蒙古斑は4~10歳で自然に消失していくことがわかっており、治療の対象になりません。しかし、蒙古斑がお尻以外に発生することがあり、これを異所性蒙古斑と呼んでいます。足でも体でもどこでもあり得ます。異所性蒙古斑の中でも以下のようのものは自然消退を望めませんので、治療の対象となります。
・色調が濃い
・広範囲
・境界がはっきりしている
標準的治療方法はQスイッチレーザーと呼ばれる、レーザー治療となります。お子様の場合、小学生になるぐらいになっても消退する傾向がなければ治療を開始します。幼児期より、明らかに自然消退が望めない色調のものですと、すぐに治療を開始することもあります。
Qスイッチレーザー治療は3~6か月おきに、5~10回程度の治療回数が必要です。
片側の顔面にできる青あざです。生後しばらくして少しずつ発症し、思春期ごろに悪化し、社会生活上大きな問題となることがあります。真皮にメラノサイトが散在し、灰色から青色の色素斑ですが、白目の粘膜や、口腔内にもメラニンの増加を確認できることもあります。臨床的に、幼児の小鼻や眉毛の横あたりに青色のあざが小さく出てきて発見されることが多い印象です。
自然に治癒することはありません。過去には手術によって除去し皮膚を移植したり、ドライアイスを押し付けたりと、つらい治療が行われておりましたが、90年ごろからレーザー治療が普及してきました。Qスイッチレーザーが現在の標準的治療方法です。3~6か月おきに、10回程度の治療回数が必要です。
治療開始年齢は、早い方が効果も高く少ない回数で済み、色素脱失や色素沈着などの合併症の率も少なくて済むといわれています。
境界のはっきりした茶色のあざです。生まれつきあるものや、乳幼児期に出現するもの、思春期ごろに出現するベッカー母斑と呼ばれるものなどありますが、見た目に茶色いので診断は簡単です。
治療はQスイッチレーザーが標準的治療なのですが、青あざに比べると有効率が劣ります。無効例は約65%です。著効は17%、改善程度は18%です。これは性別年齢には関連はありませんが、顔・首→体→四肢の順に有効率が下がります。またきれいな円形の扁平母斑より地図状の方が効きやすいといわれています。
日本で保険治療が可能なのはQスイッチルビーレーザーという機種です。
レーザー治療が無効なケースでは手術を選択することになります。部位と大きさによって、切除後の皮膚再建方法が変わりますので、個々にカウンセリングが必要です。
いわゆるほくろです。大小さまざまです。
治療方法は手術による切除やくりぬきと、炭酸ガスレーザーによる除去がスタンダードです。自由診療で治療する場合は炭酸ガスレーザーとQスイッチレーザーを組み合わせたり、Qスイッチレーザー単独で治療することもありますが、真皮内に深く母斑細胞が存在するものが多く、やはり炭酸ガスレーザーによる治療が主となり得ます。また、この場合、治療の傷痕が残存してしまうことを理解して治療いただくことになります。
鉛筆の芯が刺さって黒鉛が残存したり、アスファルトで転倒し、砂の色が残存したりすることがあり、これを外傷性刺青と呼びます。皮膚の中に存在しているものはQスイッチレーザーで治療可能です。
Qスイッチレーザーと呼ばれるレーザー光を照射します。レーザーは皮膚に存在するメラニン色素に対して吸収されます。吸収されると光エネルギーが熱エネルギーとなり組織を壊します。壊されたメラニンは脱落したり吸収されてなくなっていきます。広範囲に施術する場合はあらかじめ表面麻酔クリームなどを使用して痛みを軽減させます。現在の色素性病変の治療で最も有効な治療法の一つです。
保険適応:異所性蒙古斑・太田母斑・扁平母斑・外傷性色素沈着(外傷性刺青)
保険適応外:シミ(老人性色素斑・後天性真皮メラノサイトーシス)・入れ墨・タトゥ
術後経過として以下のことが起こりえます。特に炎症後色素沈着と、色素脱失については、ご理解が得られない状態での治療はお受けいたしかねます。
カテゴリ:母斑(あざ・ほくろ) 院長ブログ
2017.10.29
神経線維腫症1型 neurofibromatosis type1 これをレクリングハウゼン病von Recklinghausen diseaseと呼んでいます。
症状が進行すると難病に指定されます。DNB分類stageⅢ以上
粉瘤にしてはやわらかく、poreもない。また、大小さまざまで、盛り上がりの大きいものから平坦に近いもの、垂れ下がるぐらい突出したものなどが、全身に多発した皮膚の腫瘍を認めます。これは、神経線維腫の可能性があります。さらに、次の症状があれば診断が確定的です。
扁平母斑と呼ばれる茶色のあざが、大小さまざまに認めます。これは扁平母斑ではなく、カフェオレスポットと呼ばれます。6個以上で本症と診断できます。
3000人に1人の頻度で、常染色体優性遺伝、つまり、必ず遺伝して発現します。しかし半数以上は突然変異といわれます。
・進行する疾患なので、皮膚の神経線維腫がどんどん増えていき、社会生活上、整容的な問題となります。1000個以上できると難病指定を受けることになります。
・脳や脊髄の神経に神経線維腫や、髄膜腫が発症し、中枢神経障害や痙攣などの発症することも考えられます。
・知能障害や学習障害を有していることがある。
・子供に遺伝する。
・神経線維腫の悪性化はままれであるが考えておかねばならない。
根治療法はありません。上記の問題が生じたときに対症療法を行うことになります。
私たち形成外科領域では、目立つ部位の神経線維腫を切除することと、カフェオレ斑をレーザー治療などすること(再発することが多いですが)などです。
カテゴリ:母斑(あざ・ほくろ) 皮膚良性腫瘍(おでき)
2016.10.18
この写真は右の脇にできた粉瘤に細菌が感染して、腫れてしまった患者さんです。
感染性粉瘤といいま す。感染性粉瘤の治療法にはいくつか選択支がございます。
それぞれの方針について説明します。
膿を出すためには、針で刺すだけでは出し切れません。数日は自然に出続けるような穴を切開しておかなければなりません。しかし、わずかな麻酔注射で簡単に施行できる処置です。傷痕は残ります。袋をとりませんので、必ずしこりが再発します。今度は感染する前に摘出しなければならなく、再度手術を要します。
1に加え、排膿した穴から粉瘤の被膜を引きずり出す、あるいは切り出す、あるいは掻き出して取り除く努力をする方法です。しっかりと内部まで操作するので、麻酔注射も炎症が強くある中に打ち込み痛みが強いように感じます。この方法では粉瘤の摘出をするので再発率はかなり下がります。
注射や切ったりするのが嫌でしょうがない方は、抗生物質の内服だけで様子を見ます。うまく治っていくなら数日後から痛みや赤みが改善してくると思います。しかし、この方法も根治はさせていないので、いったん良くなってもしこりは残存し、またいつ感染性粉瘤となるか不安です。しかも膿がたまってしまった状態では、内服のみで寛解する保証もなく、1週間内服しても症状の変化がない、もしくは悪化する可能性もあります。
直径4㎜の穴から感染性粉瘤の組織を摘出しました。この穴の傷は縫合せずに開放しておけば1週間で治癒します。
余談ですが、その時、中から塒(とぐろ)を巻いた毛が出てきました。専門的な話ですが、毛包上皮も表皮とともに皮内に迷入し、狭い部位で毛が成長したのでしょう。結構長そうですが。
岐阜市薮田南 形成外科・美容外科ぎふスキンケアクリニック しこり おでき できもの 粉瘤 アテローム 脂肪の塊 感染 手術 に関する投稿
カテゴリ:皮膚良性腫瘍(おでき)
2016.10.10
全切開式重瞼術や眼瞼下垂手術では、予定した高さに二重まぶたの折れ込みを作りこんで傷を閉じます。(重瞼線の作成)この予定した高さというのは縫い合わせた傷自体の高さです。この高さより上に折れ込みが入ってしまうのを予定外重瞼線といい、予定した線でしっかりと二重の折れ込みがはいらなくなってしまいます。
予定外重瞼線は手術直後から一週間目までに気づきます。自然に改善することもあるのですが、改善しないと再手術を要しますので、怪しい患者さんにはその時点で袋とじと呼ばれる方法、もしくはつり上げを行って予防します。
袋とじは簡便で効果的なので、よく行われる手法です。
ヴェリテクリニックの室先生のブログにわかりやすいシェーマが載っておりました。この記事を見た直後に当院でも眼瞼下垂手術をしたので、紹介しました。
袋とじのデザインです。紫ラインの3か所に睫毛側と眉毛側の皮膚どうしを縫合して、傷を塞ぐ形にします。
このケースでは予定外重瞼線ができそうな中央部から内側にかけてのみ袋とじしましたが、全体に掛けておくことが多いです。少し目が閉じにくくなります。
カテゴリ:眼瞼下垂 重瞼術(二重まぶた)
2016.09.27
顔の“ほくろ”は印象を決めます。除去すると若く見え、肌がきれいに見えることも。皮膚がんとの区別は専門医に相談。日常よく遭遇する“ほくろ”について解説致します。
医学的には母斑細胞母斑もしくは色素性母斑という病名です。黒いメラニン色素を産生するメラノサイト系細胞である母斑細胞の増殖したものです。比較的小さなもが俗に“ほくろ”と呼ばれています。診療の健康保険適応に関しては各医療機関に問い合わせてください。状況(症状や希望の治療方法など)により判断する場合が多いようです。
“ほくろ”は年々増えていったり、盛り上がってきたり、色が抜けてきたりと変化をします。しかし月単位での急な変化は皮膚がんの可能性もあります。特に高齢者の顔面や手背など日光露出部にできやすい皮膚がんは多く遭遇します。また以前からある足の裏の“ほくろ”がすぐに皮膚がんになることは少ないですが、最近気づいたものであれば受診されるのが安心です。
医学的に、取ってはいけない、という“ほくろ”はありません。整容的観点から除去の適応との考えもありますし、皮膚がんとの鑑別の観点から切除検査する考えもあります。
除去方法には大きく2つの方法があります。摘出手術とレーザーによる焼灼術です。いずれも局所麻酔薬を患部に注射して処置を行います。麻酔時は若干の痛みを伴いますが、手術中や術後はほとんど痛くありません。
1)摘出手術 メスなどを使って母斑細胞を周囲から完全に切り取る方法です。
a)単純縫合 紡錘形に切開して、線状に縫合閉鎖します。
b)巾着縫合 “ほくろ”の形に合わせてくり抜き、傷口の内側に縫合糸を通して、巾着袋の紐を絞めこむように閉鎖します。(くり抜き径が小さいものであれば、縫合せずに自然閉鎖させることもあります。)
鼻の下にあるほくろです。くり抜いて巾着袋の紐を占めるように傷を閉じます。(次の写真)
約1週間後に抜糸を行い、その後約3か月、テーピングを行います。
2)焼灼除去術 炭酸ガスレーザーや高周波メスなどを使用して、母斑細胞を上から削り取る方法です。削った部位は開放された傷の状態ですが、湿潤療法で自然に皮膚が修復されるのを待ちます。
大きさ、部位、患者様の希望などを考慮して上記方法を使い分けて治療します。
術後は翌日より創部もシャワー浴で洗浄可能です。創部を含めた入浴やプールは1週間後の抜糸等処置後から可能です。消毒は不要です。創部は創傷被覆材を使用して保護し、ご自身で交換しておいていただきます。被覆材の上からメイクが可能です。どの方法で治療しても術後3か月程度、強い赤みと黒ずみ(炎症後色素沈着)が出現します。6か月から12か月かけながら徐々に目立たなく馴染んでいきます。炎症後色素沈着がある期間は特に紫外線対策や保湿を心掛けていただきます。
カテゴリ:母斑(あざ・ほくろ) 院長ブログ
2016.09.22
指の怪我で多いのですが、写真のように、絆創膏を貼ったまま、水仕事などされると皮膚がふやけます。これを浸軟とよびます。この状態では傷の治りが悪くなります。
湿潤療法は傷を乾かないように、創傷被覆材で覆う治療なのですが、ただの絆創膏では過度に湿潤して浸軟してしまうか、逆に軽い傷の時は浸出液を吸い上げすぎてカピカピのカサブタ状態になってしまいます。これもまた傷の治癒を遅延させる原因です。
当院では傷の状態に合わせて、適切な創傷被覆材をご提案しています。次の写真は治癒した時ですが、皮膚の状態はこのように浸軟していない方がよいのです。
2016.08.30
光老化と呼ばれますが、しみ・シワの原因として、紫外線は8割の悪役を担っています。年齢のせいにしてはいけません。そして、皮膚がんの重要な原因になっています。外仕事(農業や漁業など)をつづけてきた高齢者の方の日光露出部位(顔や手の甲)などは、よく皮膚がんが発生します。一卵性双生児が、紫外線対策をした方と、しない方で80歳まで観察すると別人のように肌質に違いがでるのです。
一利あるといわれるは、紫外線によって体内にビタミンDを合成することができるということです。その為過去には日光浴というものが推奨されましたが、必要なビタミンDは日陰に30分、つまり普通に生活しているだけで十分な紫外線量が得られます。
健康的に日焼けするなんてことは、過去の妄想です。
・子供のうちから日焼けをしよう! と言っていると皮膚がんになります。
・夏日焼けをすると冬風邪をひかない! と言っていると免疫機構が1週間程度不安定になってヘルペスが出たり、疲れをためてしまいます。
・日光浴で丈夫な骨を作ろう!上記のごとく、その必要はありません。
衣服、サンスクリーン剤、つばの大きな帽子、サングラスを使って紫外線防御し、日陰にいなさいというキャンペーンです。slip slop slapと韻を踏んで国中に浸透させ、皮膚がんの発症を減らしているとのことです。
日焼け止めに関してはSPF15~30 PA1+を日常的に塗布することで、日光黒子や日光角化症(皮膚がんの手前)扁平上皮癌も、光老化も効率的に予防可能です。しかし、薄く塗るだけではだめです。重ね塗りするぐらいで表示された効能を発揮しますから、注意してください。塗り直しが重要なのも上記のとおりです。
本来教育現場で行うべき紫外線対策を挙げてみますが、日本は先進諸国の中でもかなり遅れているようです。文科省は主導力が弱く、日本美容皮膚科学会などが主導で啓蒙活動を行っています。
紫外線量は一日の中でも変化します10時から15時の比較的紫外線量が多い時間帯は、外での活動を控えるべきです。しかし学校でも幼稚園でも真昼間にプールやってます。
昼にプールをせざるを得ないのであれば、天幕を張ってやりましょう。それもできないのであれば、せめてプールサイドに日陰は作っておくべきです。そして夏は室内中心のスポーツにした方が良いのかもしれません。
ラッシュガードが許可されている学校は少ないと思いますが、推奨すべき紫外線対策です。
ウォータープルーフの日焼け止めは塗ってプールに入るべきです。水が汚染して濁るなんてことはありません。これもまた、子供に日焼け止めを持参させて良い学校なんて聞かないですよね・・・。
3)4)に関しては、給食代も払わない家庭がある中、日焼け止めも買わない(買えない)という家庭もいらっしゃると思いますので、学校側で準備するなど、課題が多いと思います。
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